犬の態度、ママとトレーナーの違い | DogsByNature

犬の態度、ママとトレーナーの違い

Wrote:05.21.2006
カテゴリー:ロンドン回想録


ニューファンランドのプレスリー君。

彼は月曜日から金曜日の毎日、午後のクラスでお散歩。

師匠ジアーニが彼と歩くとき、リードはほとんど使いません。

けれど、ある日、首にスプレーカラーをつけているのを発見。

「あれ?今日だけどうして?」

「僕と一緒にいるときは、いつものとおり必要ないんだよ。

1年ぐらい前、彼の飼い主さんに赤ちゃんができて以来、人や犬に吠え付くようになってね。飼い主さんがこれを使うようになったんだ。

最初のセッションで彼には効き目があったみたいだから、もう今はスプレーを出す必要はないんだけど、飼い主さんにとっては、このカラーをつけておくだけで、ちょっと安心できるらしいんだ。

何せニューファンランドは大きな犬だからね。興奮し出すと、周りの人も驚くし、飼い主さん本人もコントロールに自信がないようでね。

飼い主さん、朝のお散歩から今日はとり忘れてるんだろうね。」

「ふーん」このときはひとごとのように聞いていた。

しばらくして、プレスリーが私に随分なついたので、私が担当させてもらえることになった。

公園でいつものとおり、おもちゃで遊んでいたところ、他の犬が私たちに近づいてきた。すると、プレスリーはしっぽをぴんと立て、唸った。

まさかの瞬間、その犬とプレスリーは‘ガウガウッ’・・・。

「LEAVE!」私がコマンドを出そうが、相手が引かない限り、プレスリーにも危険が及ぶ。両者引き下がらない。

ゆっくり近づきプレスリーの背後にまわる。

タイミングを見計らい、後ろ足から腰をもって、引き離す。

相手の犬の飼い主は、まだ姿を現さない。

もう一度、「LEAVE」の一喝。相手の犬の興奮もやや収まり、二人は離れた。

そこへ、巡回中のパークポリスの車が止まる。

「KEEP YOUR DOG UNDER CONTROL
(自分の犬をちゃんとコントロールしなさい)」

と痛いお叱り。こういう時は、素直にごめんなさい、といって素早くリードがついていることを見せ、犬にフセをさせ、落ち着いた態度を見せることが何よりも大事。

そうなんです。相手どうこうという前に、自分が犬をコントロールしているか、が問われるのです。つまり、犬が絡み合う前に呼び戻していれば、未然に防げたことなのだから。

誰よりも愛されたくて、人が大好きなプレスリー。公園で他の犬とすれ違うことは、日常茶飯事だし、こんなに怒った姿をみたとはなかった。

こんな場面が訪れると予期できず、コントロールしきれなかった自分。

スプレーカラーをつけていなかったから、ということが問題であろうか?

ジアーニと一緒のときにはまず起こらない。

トレーナーさんのいうことは良く聞くのに、私の言うことは聞いてくれない、よく耳にする話です。

一体何が違うんだろうか?

それは、この後5年間、そして今も、私の追求するテーマのひとつ。

おこがましながら、私の観察、経験から考えをまとめてみました。

 

違い1 日頃の関係日常過ごす時間、その過ごし方
例えば、室内飼いで日頃から話し掛けたり、触ったりする場面の多い飼い主とそういう時間を過ごす時間が少ないトレーナー
日頃、お留守番やつなぎっぱなしの時間が長くて、えさをくれるだけの飼い主と遊びやお散歩を通じて、楽しい時間を一緒に過ごしてくれるトレーナーいずれにしても、トレーナーと過ごす時間は、何か意味深、もしくは特別って犬も認識しやすい。

違い2 態度
トレーナーは犬の行動を理解した上で、あいまいな態度は取らない。
犬を扱うときの態度が自然に、クール、落ち着いていることが犬に伝わる。
言い換えれば、トレーナーは態度によって、犬語を発している

違い3 眼光
よいトレーナーほど目でものを言う
犬は声の会話よりも態度や目つき、顔の表情をよくみている。
鋭い眼光、優しいまなざし、これも犬語。一般の人はなかなか目でものがいえない。

違い4 犬の行動の読み取りの早さ
トレーナーは犬の動きをよく読み取れ、犬が次に取りそうな行動を予期できる。
よって、的確な指示を自然に適時に出している。

これらが組み合わさって、犬がトレーナーの言うことを自分より聞いている、ように見えるだけで、実際は行動を先読みし、的確な指示をだせるかどうかがポイントなんですね。

 

今だから、わかること、あの時何がいけなかったのか。
1.近づいてきた犬の態度が‘威圧的’であったこと、にすばやく気づかなかった自分
2.それにプレスリーも引き下がらず、‘威圧的’な態度を示したこと、に対応しなかった自分
3.そこに、仲間とおもちゃ、というかれにとって守るべき大事な存在があったこと、プレスリーが引き下がらない可能性が高いこと、への自分の理解不足

もし、これを瞬時に読み取れ、次の事態が予測できていたら、
4.自分の声や動きによって近づいてきた犬から気をそらし、自分の方へ注意を引くできれば、犬同士の距離をとるように誘導する
=呼び戻す際の精神的余裕ができる

5.呼び戻しをする
=肉体的に自分が届く範囲内に犬を置くことで、相手の犬を自分の犬に接触させない

6.さらに、必要ならば、リードを短くもったり、カラーをつかみ、プレスリーは自分の管理化であることをプレスリーにも相手の犬にも知らしめる、理想的には、フセやオスワリという指示、行動によってプレスリーの動きを制する

4から6は、状況によって微妙です。
臆病な犬はリードをつけられることによって、逃げ場はないと感じ、攻撃的な態度にでることをあと押ししてしまう可能性があるからです。
基本的に臆病な犬は、足が速くて逃げ切れるようであれば、リードにつながない方が安全かもしれません。けれども、怖さで逃げ惑うあまり、戻ってこれない場合、逃げるスペースが狭すぎて、すぐに追い詰められる場合、逃げ込む安全な場所がない場合は、ハンドラー自身が相手の犬を追い払うことの方が肝心でしょうね。

プレスリーのように、臆病なのではなく、威圧的な場合は、ハンドラーに状況判断の主導権があることを犬に知らしめるため、動きを制する形の方がベターでしょう。
いずれにしても、相手の犬の態度、しつこさによっても対応は違うでしょう。

こんな一件があって以来、私はプレスリーとトレーニングのおさらいの時間を増やしました。

それから、しばらくして、偶然、プレスリーのママに公園で出会いました。

ジアーニとプレスリーのママは立ち話。

その間、少し離れたところで、プレスリーは私とゲーム。

他の犬が私たちの方へ興味ありげに近づいてきました。

「プレスリー、LEAVE」

すかさず、小声で指示した私。また、自分では無意識かもしれないけど、恐らくこのとき同時に、寄ってくる犬をにらんでいたでしょう。
「寄ってこないで。」を伝えるために。

このとき、プレスリーは私たちの近くにいたので、放っておきなさいの意味の「LEAVE(リーブ)」です。
もし、プレスリーが手の届く範囲内にいなければ、呼び戻しの「COME(カム)」です。

プレスリー君は私のほうに顔を向け、「何かあったの?」の様子。
他の犬は、「相手にしてくれなさそうだな」の様子。
何事もおこりませんでした。

そして、その光景を見ていたジアーニ。
「最近、プレスリーはキョウコのことしか言う事聞かなくてね」

と軽くウィンク。

誇らしげな私でした。

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PS 
いつも他の犬と接触させない、というわけではありません。
相手の犬の態度や性別によって、トラブらないと判断したときは、あいさつさせてあげたり、顔見知りの気のあった犬なら、追いかけっこをすることもあります。
けれども、基本はいつも他の犬にあいさつする前に、呼び戻す。それから「OK」の合図によって、あいさつに行かせてあげます。

これを怠ると、犬に限らず周りの気になるものを、ハンドラーの指示よりも優先する傾向がでてきてしまいます。

言い換えれば、どんな状況でも呼ばれたらすぐハンドラーのもとへもどるというルールを常に強化するため。いざというときの呼び戻しができるためには、こういった状況を利用して常に、自分の気になるものより、ハンドラーの呼び戻しが優先という
ルールを教えていく必要があります。

「呼んでも戻ってこない」「自分の都合のいいときしか戻ってこない」
という裏には、呼び戻しのルールもしくは定義をハンドラー自身がきちんと理解していないことが原因である場合が多い。日頃の付き合いのなかで、呼んでも反応しなくていい、という犬の態度をまぁいいか、で容認してきているので、肝心なときだけ呼び戻したくても呼び戻せない、というだけなのです。

犬の言い分
「呼ばれたからと思って戻ったのに、リアクションないんだよね。意味ないじゃん」「ものすごくエキサイトしていて、こわそうだから戻る気しない」
「呼ばれてるのかどうかわからないから、自分の好きなことをする」
「呼び戻し、呼び戻しっていうけど、呼ばれたらすぐに、いつでも、なんて誰がきめたん?」




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